ファルスタッフ(1)おすすめの映像

ファルスタッフ(1)おすすめの映像

10月20日、21日、23日に上演される東京フィルハーモニー「ファルスタッフ」に演出補で参加しております。マエストロ・チョン・ミュンフンが指揮と演出です。

 

これを機に改めて「ファルスタッフ」の色々な音源を聴きました。ジュリーニ、ムーティ、ショルティ、カラヤン、ガーディナー、ハーディング、バーンスタイン。それぞれに良い点、不満な点がある中で… 

音源としても映像としても推しなのが、ヘンゲルブロック指揮、バーデンバーデン祝祭劇場の2007年の公演です。演出はフィリップ・アルロー。

Opera on Videoというサイトで全幕観ることができます。

まず、演出が良い。演技が非常に綿密に作られていて、全てのセリフが動機に裏付けられており、芝居としても楽しめる水準。歌手の中では、タイトルロールのアンブロージョ・マエストリも良いのですが、フォードをマイケル・フォレが歌っているのが良いですね。声も演技も。

そして、指揮者がドラマを非常によくわかっているのを、オケの音楽作りから感じます。躍動感と推進力があり、アーティキュレーションがキビキビしている。テンポの変化もドラマにピッタリと合っています。ユーモアも感じられ、テキストと音楽の相乗効果で、本当に楽しいのです。人物が言ったことに対してオケがコメントする感じで、オケも登場人物の一人。各楽器セクションがよく聴こえてくるのも良い。オペラ指揮者はこうであってほしい!という例です。

歌唱力だけを考えた場合、いわゆる大スターは昔の方が多かったかもしれません。しかしオペラの演技面の技術は数十年前に比べてはるかに水準が上がっているので、良い演出家、良い歌手、良い指揮者が揃った場合、総合的にみて、昔の演奏よりも絶対に良い演奏になる。というのが私の持論です。テキストのニュアンスの複雑さを、演出家と歌手が一緒に作り上げ、それを音楽面から支える指揮者がいれば、オペラという舞台芸術は最強ですね。

ヴェルディ「ファルスタッフ」
2022年10月20日 19:00 サントリーホール

10月21日 10月21日 19:00   東京オペラシティ コンサートホール

10月23日 15:00  Bunkamuraオーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
ファルスタッフ(バリトン):セバスティアン・カターナ
フォード(バリトン):須藤慎吾
フェントン(テノール):小堀勇介
カイウス(テノール):清水徹太郎
バルドルフォ(テノール):大槻孝志
ピストーラ(バス):加藤宏隆
アリーチェ(ソプラノ):砂川涼子
ナンネッタ(ソプラノ):三宅理恵
クイックリー(メゾ・ソプラノ):中島郁子
メグ(メゾ・ソプラノ):向野由美子
合唱:新国立劇場合唱団

 

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