二期会「サロメ」は通し稽古が始まって、合間にマエストロの音楽稽古も行われている。
セバスチャン・ヴァイグレ氏は2年前に参加した「ばらの騎士」も指揮をされた。
彼のサロメの音楽稽古はドイツ語のテキストの喋り方が主で、「ここはこういう状況・心境だからこういう喋り方」という指摘が結果的に音楽づくりになる、という感じ。特にシュトラウスは旋律がテキストにぴったり寄り添って書かれているので、テキストにメリハリをつけることで、書かれた音楽がより明確に、鮮明になる。
サロメに恋するナラボートの「なんて美しいんだ、今夜のサロメ姫は」”Wie schön ist die Prinzessin Salome heute nacht”の、夢見ごごちのリリックな喋り方。それに対する小姓の、サロメを墓や死と結びつけてとらえる、”Grab”や”tot”の深い響き。
「何が欲しい?」とヘロデに聞かれて、「ヨハナーンの頭」とサロメが答える時に、「みんな彼女が何が欲しいのか知らない中、初めて「頭」と言うのだから、”Kopf”の”K”を立てると良い」(確かにここのDen Kopfにはスタッカートがついている)
うるさいヘロディアスに「黙れ、お前に話してるんじゃない」と言う時のヘロデの”zu dir”のdirを強調する。
などなどはほんの一例。
場所によっては音符に忠実というよりも音符からはみ出すくらいの表現になるのだが、それこそは作曲家が意図したものだろうし、オペラの楽しさだと思う。
普段あまりオペラを振っていない指揮者だとこういう指導にはならないし、テンポも歌っている内容と関係ないテンポになって違和感があったりすることがあるけれど、ヴァイグレ氏の音楽づくりはテキストベースでとてもオペラ的。
歌手の皆さんは恐ろしく水準が高くて、超難解な旋律、超複雑なアンサンブルをこなしながら演技にも没入していて、感嘆しかありません。ぜひ観に来ていただきたいです。
二期会による撮影の、二日目組の集合写真。実際に舞台で使う巨大な階段を稽古場に組んで稽古しています。