オペラ演出というものが飽和状態に思える昨今。紀尾井ホールのCosiは、コンサート形式で演奏と演技を充実させるのが一つの答えだという信念で取り組みました。
奇抜なことをやるのではなく、きちんと人物分析をし、各人物を造形し、「なぜここではこんなことを言うのか、こんな音符で歌っているのか」 の裏付けとなるバックストーリーを作り、瞬間ごとの人物の意図を明確にし、それをマエストロとの共同作業で音楽・演奏と一体化させると言うことです。
ありがたいことに「3時間が全然長く感じなかった」という感想を多くいただきましたが、それは歌手の皆さんとオーケストラの演奏の素晴らしさは勿論のこと、各人物の心理面のスルーラインを作り、常に明確な意図を持ってセリフ・歌を発してもらうことを心がけたからではないかと思います。お客さんを引き込むのに必要なのは演技のリアリティだと思います。もちろん、舞台芸術なので、意外性のある仕掛けなども大事ではありますが…
(読み替え演出に反対しているわけでも、伝統的なのがいいと言ってるわけでもなく、優先順位の話です)
とはいえ稽古開始から1週間弱での本番。本当にタイトなスケジュールの中で、懸命に応え素晴らしいパフォーマンスで魅了したキャストの皆さんには感謝しきりです。
舞台監督の井坂舞さんとアシスタントとして奮闘してくれた植山愛結さんに特別の感謝を申し上げます。