今回はリサーチが旅の主な目的なので、ガイドブックに載っていないような美術館・博物館も色々巡っていますが、特に面白かった「スティッベルト美術館」をご紹介します。
たまたまこの美術館の職員リッカルド・フランチ氏と知り合う機会があったためにここの存在を知り、訪れることになりました。
フィレンツェの中心部からバスで20分くらいの閑静な住宅街の中にあります。
ここは19世紀の邸宅を美術館にしたもので、元はフレデリック・スティッベルトという、イギリス人貴族とイタリア人女性の間に生まれた男性が住んでいた家。様々な文化の歴史や美術品全般、家具、衣装、武具などに魅せられていたスティッベルトが、個人の趣味でヨーロッパ中のアンティーク商を巡って買い集めた品々を展示してあります。
部屋ごとにテーマがあり、例えばアールヌーヴォー時代の家具でまとめた部屋、ロココでまとめた部屋、帝政時代の部屋・・・ などの部屋があるのですが・・・
特筆すべきは、武具のコレクション。
去年もロンドンで様々な博物館を巡りましたが、こんなに武具で埋め尽くされた部屋は見たことがありません。
レイピアのコレクション。ひとつひとつ全部デザインが違います。
これ全部、スモールソード。
それぞれ、柄に見事な彫りがほどこされています。
甲冑にも丹念なデザインが。
アラビア・トルコの剣のコレクションもあります。
槍も多数。槍のデザインがこんなに色々あるなんて初めて知りました。
武具の製作は洗練された職人芸であったことがよく分かります。中世~18世紀、美しい武具は貴族しか持つことが出来ませんでした。
日本の兜と刀のコレクションもあります。スティッベルトが19世紀後半にイタリアで買い集めたそうです。明治維新の際、武士が武具を売らないといけなくなって市場に出したものがかなりヨーロッパに渡っていたらしいです。
甲冑たちが行進してます
これ全て、スティッベルト個人のコレクションで、本人が陳列のアレンジもしていたらしいです。要するにオタクです。きっと戦闘モノがたまらなく好きだったんでしょうね。私はこれを見て、自宅の一部屋をガンダムのコレクションで埋め尽くしたり、戦艦プラモデル専用の部屋にしたりする男性を連想してしまいました。実際、スティッベルトは、自分で甲冑のコスプレをしてポートレートを描いてもらったりしていたそうです。
「音楽の部屋」もありました。こちらは2階のバルコニーのような作りになっており、ここで奏者が演奏して、下の広い部屋で舞踏会ができるようになっています。そこに16世紀頃製作のチェンバロがあったのですが・・・
蓋の内側が、オルフェオのデザインでした!
時間さえあれば一日中眺めてタイムトリップしていたい美術館でした。
美術館のサイトはこちら
http://www.museostibbert.it/ja