アントネッロ「エウリディーチェ」お陰様で満員御礼、大盛況のうちに終えることができました。
今回の演出は、濱田芳通氏率いるアントネッロの紡ぎだす音楽にできるだけ寄り添う事を心がけました。濱田さんのこの作品に対する音楽的ビジョンが極めて明確だったからです。近代のオペラと異なり、初期バロックオペラはオリジナル譜には歌の旋律と通奏低音が書かれているだけで、オーケストレーションやリアライゼーションはその時々の演奏家に委ねられています。この作品のCDは二種類発売されていて、稽古前は両方聴いて準備していましたが、実際に稽古が始まってみると濱田氏のリアライゼーションはどちらのCDともテンポも、インストゥルメンテーションも、雰囲気も各場面全く異なり、サプライズに満ちたものでした。演出プランは当然、稽古前に全て用意して行きましたが、例えば想像より音楽がユーモラスな箇所はユーモアのある演技にしたり、という微調整は稽古場で行っていきました。稽古場でそういう意味の即興性が求められることが意外に楽しく、とても刺激的な作業でした。
ヨーロッパ、特にドイツではめったに上演されないバロックオペラでもスーツなど現代風衣裳で上演することが主流になっていますが、私は珍しい作品を上演する場合、まずは観客が頭を使いすぎずに作品をありのままで味わうことができるようにするほうが好ましいと思っています。また今回はオペラ最初期という特別な作品のため、作品が作られた1600年の時代背景を是非とも取り入れたいと思ったので、冒頭は作曲時の1600年、本編は古代ギリシャ風の衣裳にしました。
舞台が絵画のようだったという声をありがたくも頂きましたが、実際、いくつかの場面はフィレンツェの美術館・博物館で出会ったルネッサンス~バロック時代の絵画からインスピレーションを受けたり、参考にしたりしています。
冒頭、カメラータの面々が集まって、書いたばかりのオペラ「エウリディーチェ」を吟味している場面。
オルフェオの結婚を祝う羊飼い達
冥界の王プルトーネは、1400年代にメディチ家で初めてフィレンツェの君主となった「祖国の父」コジモ・デ・メディチ
(馬に乗っているのがコジモ)
パストーレとニンファが集う理想郷アルカディア全般の色調は、「サテュロスとニンファのいる風景」
1幕ラスト、「万物は変化する」という意味のテキストが歌われる場面では、天動説から地動説へと移行する時代と連動してダイナミックに動く宇宙をイメージした照明を作りました。
衣裳:仲村祐妃子
照明:稲葉直人
舞台写真: ©藤井亜紀
オルフェオ:黒田大介
エウリディーチェ:高山潤子
ダフネ・女神:澤村翔子
ティルシ・プルトーネ:和田ひでき
シルヴィア・プロセルピナ:末吉朋子
アミンタ・カロンテ:中嶋克彦
クローリ・ヴェーネレ:染谷熱子
アルチェトロ・ラダマント:上杉清仁
悲劇:彌勒忠史