スウィート・チャリティ(2)ボブ・フォッシーについて

スウィート・チャリティ(2)ボブ・フォッシーについて

 フォッシーは独特のダンススタイルでミュージカルとダンス全般に絶大な影響を与えた天才振付師。「キャバレー」「シカゴ」などの代表作がある。トニー賞を振付で8回(この記録はまだ破られていない)、演出で1回受賞した。

 自分の身体の弱点(背中が丸まっている、内股、若い時から禿げていた、自分の手が嫌いだった)を逆手に取り、一風変わったセクシーな動きと、頭と手を隠すための帽子や手袋などの小道具の多用が特徴。女性の身体の美しさを賛美するダンスを多く生み出した。まだ保守的だった60年代は、彼のダンスはセクシーすぎると批判が出たほどだった。

 実は私がアメリカのハイスクールで初めて出演したミュージカル「パジャマ・ゲーム」は、フォッシーが1960年の初演時に振付家としてデビューした作品だった。当時はフォッシーの事など何も知らなかったが、今改めて見れば、代表的な曲 “Steam Heat”はまさにフォッシースタイル全開のナンバーだ。

「パジャマ・ゲーム」より “Steam Heat”

https://www.youtube.com/watch?v=0szHqIXQ2R8


 という訳で今、「スウィート・チャリティ」にとても愛着を持って取り組んでいる。


 これは90年代にロンドンで観た、フォッシー・トリビュートとして製作されたミュージカル”Fosse”のパンフレット。「スウィート・チャリティ」から”Big Spender” “Rich Man’s Frug”も含まれている。

 

 10代からヴォードヴィルでパフォーマンスを始めたフォッシーは、当初は一ダンサーだった。「キス・ミー・ケイト」の出演で演出家の目に止まり、「君はうますぎるから、自分のナンバーは自分で振り付けたらどうか」と言われて一曲だけ振り付けたのが振付家としての出発。その映像がこちら。もうすでにフォッシーのスタイルが明確。それになんと敏捷な動き!

https://www.youtube.com/watch?v=qw0FSREoaLQ


 その後、「パジャマ・ゲーム」初演が彼が初めて作品全体を振り付けたミュージカルとなった。

 こちらは彼の3人目かつ最後の奥さんで彼のミューズ、グウェン・ヴァードンと一緒に踊っているナンバー。ヴァードンは「スウィート・チャリティ」初演の主役でもあった。

https://www.youtube.com/watch?v=BIiZuAVZH4w

 

 フォッシーの女癖が激しかったため、結婚生活は長続きしなかったが、離婚はせず、二人は最後までワーキング・パートナーで有り続け、心臓発作で死んだ時も彼女が傍らにいた。

 

 ダンサーという職業が軽視されていた時代、フォッシーはダンサー1人1人に常に声をかけ、やる気を出させ、大切にしたという。だから女性にもモテ続けたに違いない。

 フォッシーという人は男性でありながら女性をよくわかっていた人だと思う。女性が主役の「スウィート・チャリティ」を手がけていると、そう感じる。

 マイケル・ジャクソンもフォッシーに学び、影響を受けたことを公言していた。こちらはフォッシーが映画「リトル・プリンス」にヘビ役で出演している場面。

https://www.youtube.com/watch?v=xXonK8EBqmk



 そしてこれは同じ場面にマイケル・ジャクソンの Billy Jeanを当て込んだ映像!

https://www.youtube.com/watch?v=QUlEBhGgEe0