17~18世紀のマナーと所作(2)

 ムーヴメント・コーチMandyによる17~18世紀の所作、個人レッスン2回目。今回は扇子の使い方を学びました。

 オペラで女性が扇子を使うシーンはよくありますが、「あおぐ」以外に使いようがなくて困ることはないでしょうか? バリエーションをつけるとしてもせいぜい「イライラしてパタパタ速くあおぐ」くらいなのでは?

 実は当時のヨーロッパでは「扇子の言語」というものがありました。まるで手話のように、扇子の向きや動かし方によって相手に意思を伝えていたのです。女性が今のように公の場でおおっぴらに発言などできない時代、口には出さずに伝えたい相手に気持ちや意思を伝えるのに扇子を使っていました。特に不倫相手との意思疎通や、気になる相手に好意を伝えるなど、周りに聞かれては困る会話をするのに最適だったわけです。

 扇子の言語は17世紀頃にスペインで発達し、その後ドイツ、フランス、イギリスへと伝わり、19世紀までヨーロッパ全体で使われていたようです。18世紀には扇子言語を解説した本も出版されていました。

 図なしでは説明が難しいですが、いくつかご紹介します。

 

【扇子を開いた状態で】

・  右手で持って顔の前を横切らせる:「私についてきて」

・  左手で持って顔の前を横切らせる:「お近づきになりたいです」

・  頬の前を横切らせる:「愛しています」

・  眼の前を横切らせる:「ごめんなさい」

・  ゆっくりあおぐ:「私は結婚しているの」

・  速くあおぐ:「私は婚約しているの」

・  左耳を隠す:「秘密をばらさないで」

・  ゆっくり閉じる:「結婚すると約束します」

 

【扇子を閉じた状態で】

・  左手の中でくるくる回す:「今、私たちは見られています」

・  右手で持ち、左手の中をくぐらせる:「あなたが嫌い」

・  胸の前で持って先を相手に向ける:「私のこと愛してますか?」

・  先端を指で触る:「あなたと話したい」

・  先端で右頬を触る:「はい」

・  先端で左頬を触る:「いいえ」

・  先端で頭の後ろを触る:「忘れないで」

・  胸の前で持つ:「あなたは私の愛を勝ち得ました」

・ 逆さまに持って下の先を唇につける:「キスして」

 

こんな使い方を覚えておいたら、合唱の方達でもパーティのシーンなどで手持ち無沙汰にならず、周りの人たちと面白い駆け引きができるのではないでしょうか。