NY Et cetera

NY Et cetera

1)現地の友達に、地元のミュージカルオタクが集うピアノバーに連れて行ってもらいました。ヴィレッジにあるMarie’s Crisis Cafeという店です。

 ピアノ弾きが一人いて(ビリー・ジョエルの”Piano Man”ってこういう感じか)、リクエストに応じてミュージカルの曲を弾き、お客さんが一緒に歌います。

 私がいた時間は、Fun Homeから数曲を演奏した後、レミゼのほぼ全曲演奏が始まりました。ピアノの周りには常連さん達が陣取り、最初から最後まで一語一句暗譜で、絶唱してました(暗譜で)。レコーディングどおり、転調するところでは転調し、役によって声色を変え・・・

 ハイスクール時代、レミゼのカセットを聴きまくって歌詞を全部覚えた私も泣きそうでした。こういう店があるところ、さすがNY。

 

2)滞在中、美術館はユダヤ美術館とホイットニー美術館に行きましたが、ユダヤ美術館で観た画家Soutine(スーティーン)の展覧会が衝撃でした。

 Soutineはこれまで全く知らなかったのですが、シャガールと同じく19世紀末にロシアのユダヤ系家庭に生まれ、ほぼ同じ時代に同じようにパリで活動した画家です(20世紀前半)。しかしシャガールとは180度作風が違う。

 彼の作品で有名なのが、食肉シリーズ。鶏肉や牛肉の絵。幼少時にロシアの町で、肉屋の店先で食肉用の動物が目の前で屠殺される光景が衝撃で、それがずっと頭から離れず、作品の題材になったそう。

 最初にぱっと見るとただの肉にしか見えないのですが、一周して再び同じ絵を見た時、意味がわかりました。これは肉を描いているようでいて、人間の生きる苦しみを描いているのだと。喘ぐようなむき出しの痛み、えぐられる生の傷。しばらく絵の前に釘付けになり、動けませんでした。

 解説が面白かった。パリのアパートのアトリエに、近所の肉屋から弟子に買ってこさせた食肉を吊るしてデッサンをしていると、腐った肉の悪臭で近所から苦情が相次ぎ、警察までやって来た。警察官に対しSoutineは、臭いがどうのこうのよりも芸術のほうが大事なんだとこんこんと説き伏せて帰らせた、と笑

 

3)「ジャージーボーイズ」の装置には、この背景が要所要所に出て来ます。バンドFour Seasonsのメンバーの出身地、ニュージャージー州の工業地帯のシルエット。メンバー4人が貧しい町の不良少年だった出自を強調する時に出て来る。


 帰国してから「ウエストサイドストーリー」映画版を観ていて、この美術、ウエストサイドのオマージュだと気付きました。映画の中盤に一瞬だけ出て来る、この夕暮れの映像。


 

 ウエストサイドも、マンハッタンの貧民街の不良たちの話です。